Japanische Klassiker mit Furigana
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ねむのきのかげ
合歓木の蔭
山本 周五郎
Lesen Sie 合歓木の蔭 (ねむのきのかげ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.740 Zeichen · 27 Bildschirme
奈尾はうっとりと眼をつむり、酔ったように合歓木の幹へ身をもたせた、「どうぞ今のようにおっしゃって、わたくしそういうお言葉で聞きたかったのですわ、どうぞおっしゃって――」
「そうです、これが私たちの恋なのです、ここには煩瑣な生活も世間の義理もありません、夜のしじまと樹や草のほかには、この恋を妨げるものはなにもありません、現実の中へはいればどんなに深い真実の愛もいつかは冷たくひえてしまうものです、――私は二度とお手を求めもしますまい、これで充分です」
頬に涙の流れるまま、奈尾はこの時間が永久に続くようにと祈っていた。危険の去ったことに疑いはなかった。五日めごとに、男はこれまでになく美しい言葉で愛をささやく、歌のように絵のように心の思いを語る。しかしそれ以外のことは求めなかった。――奈尾はよく眠り、満ち足りた快活さで家の中を明るくした。秘めたる歓びが、謝罪のかたちで良人に酬われる、半三郎が戸惑いをするほど、奈尾の愛情は強くなっていった。
こうして季節は梅雨にはいろうとした。ひどく空気の湿ったむしむしする夜のことだったが、男のささやきの中にふしぎな言を聞きとがめた。