Japanische Klassiker mit Furigana
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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
Lesen Sie 名人地獄 (めいじんじごく) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.286 Zeichen · 301 Bildschirme
肉太の高い鼻、少し大きいかと思われたが、それがかえって役者らしい。紅をさした玉虫色の口、それから剃り落とした青い眉、顔の造作は見事であったが、とりわけ眼立つのはその眼であって、上瞼が弓形をなし、下瞼が一文字を作った、びっくりするほど切れ長の眼は、妖艶婀娜たるものであった。※々という形容詞が、そっくりそのままあてはまるような、光沢を持った純白な肌は、見る人の眼をクラクラさせた。
「妾アつくづく厭になったよ」くり返して彼女はこういった。
「いや俺も驚いた」
こう合い槌を打ったのは、彼女にとっては旦那でもあり、且つは嬉しい恋人でもある、魚屋の和泉屋次郎吉であった。唐棧ずくめの小粋ななり、色の浅黒い眼の鋭い、口もとのしまった好男子で、年はそちこち四十でもあろうか、小作りの体は敏捷らしく、五分の隙もない人品であったが、座布団の上へ腹這いになり、莨をプカプカ吹かしていた。
「つぶてでなし手裏剣でなし、なんでいったいぶち抜いたものかな。看板と板壁とを突き通すなんて、ほんとにこいつ素晴らしい芸だ」
「そんなことどうでもよござんすよ。それより、妾癪にさわるのは、選りに選って妾の顔へ、あんな大きな穴をあけて……」