Japanische Klassiker mit Furigana
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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
Lesen Sie 名人地獄 (めいじんじごく) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.286 Zeichen · 301 Bildschirme
「芸の力は恐ろしいものだ」ふと甚内はつぶやいた。
「あの馬子の唄う追分が、そうまでお前の心持ちを、捉えていようとは想像もつかぬ」
怪しい恋の三縮み
「魅入られているのでございます」「魅入られている? いかにもそうだ」「あんな男と思いながら、一度追分を唄い出されると、急に心が騒ぎ立ち、からだじゅうの血が煮え返り狂わしくなるのでございます」「そうして男から離れられぬ」「はいさようでございます」「そうしておれをさえ捨てようとする」「いいえそうではございません。何んのあなたが捨てられましょう」「いやいやおれをさえ捨てようとする」
お北の眼はまた据わった。
「あなたこそ恋人でございます!」むせぶような声であった。「ああ、あなたこそ妾にとって、本当の恋人でございます」
「おれのどこが気に入ったな?」嘲笑うような調子であった。
「ただれたような美しさが!」「おれがもしも悪党なら?」「その悪党を恋します」「おれがもしもひとごろしなら?」「そのひとごろしを恋します」「おれがもしも泥棒なら?」「その泥棒を恋します」「おれがお前を殺したら?」「わたしは喜んで死にましょう」