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Japanische Klassiker mit Furigana

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めいじんじごく

名人地獄

国枝 史郎

Lesen Sie 名人地獄 (めいじんじごく) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.286 Zeichen · 301 Bildschirme

Aozora Bunko

「南無三宝!」と仰天し、手負いの馬子を飛び越すと、街道を向こうへ突っ切ろうとした。と、行手から旅姿、菅の小笠に合羽を着、足拵えも厳重の、一見博徒か口入れ稼業、小兵ながら隙のない、一人の旅人が現われたが、笠を傾けこっちを隙かすと、ピタリと止まって手を拡げた。腹背敵を受けたのであった。ギョッとしながらも甚内は、相手が博徒と見定めると、抜いたままの血刀を二、三度宙で振って見せ、

「邪魔ひろぐな!」

と叱※(「口+它」、第3水準1-14-88)した。

この旅人何者であろう?

博徒風の旅人は、微動をさえもしなかった。依然両手を広げたまま、地から根生えた樫の木のように、無言の威嚇を続けていた。脈々と迸しる底力が、甚内の身内へ逼って来た。強敵! と甚内は直覚した。彼は忽然身を翻えすと、この時間近く追い逼って来た、二人の武士の方へ飛びかかって行った。一人の武士はそれと見るとつと傍らへ身をひいたが、もう一人の武士は足をとめ、グイと拳を突き出した。拳一つに全身隠れ、鵜の毛で突いた隙もない。北辰一刀流直正伝拳隠れの真骨法、流祖周作か平手造酒か、二人以外にこれほどの術を、これほどに使う者はない。