Japanische Klassiker mit Furigana
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めいしょうまんげつ
名娼満月
夢野 久作
Lesen Sie 名娼満月 (めいしょうまんげつ) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.840 Zeichen · 37 Bildschirme
その手を銀之丞は烈しく打振った。
「……千六殿……約束しょう。……イ……今から丸一年目に……イ……今一度、ここで会おう。それまでに二人とも、あの金丸長者を見返すほどの金子をこしらえよう。二人の力を合わせても、あの売女奴を身請しよう」
千六は感激に溢るる涙を拭いもあえず首肯いた。一層固く銀之丞の手を握り締めた。銀之丞は遥かに遠ざかった満月の傘を振りかえった。ギリギリと歯噛みをした。
「……やおれ……身請けした暁には、思い知らさいでおこうものか。ズタズタに切り苛んで、青痰を吐きかけて、道傍に蹴り棄てても見せようものを……」
「シッ……お声が……」
二人はそのまま人ごみに紛れて左右に別れた。大空の満月が花の上にさしかかる頃であった。
銀之丞は東海道を江戸へ志した。
思い迫って約束した一年の短かい間に、どうしたら望み通りの金が稼げるかと……思案に暮るる一人旅。京外れで買うた尺八の歌口を嘗め嘗め破れ扇を差出しながら、宿場宿場の揚雲雀を道連れに、江戸へ出るには出たものの、男振りよりほかに取柄のない柔弱武士とて、切取り強盗はもちろん叶わず。押借り騙取の度胸も持合わせず。