Japanische Klassiker mit Furigana
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よばれしおとめ
呼ばれし乙女
岡本 かの子
Lesen Sie 呼ばれし乙女 (よばれしおとめ) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.165 Zeichen · 11 Bildschirme
右手の若葉の谷の底に須雲川の流水の音がさらさらと聞えた。
「先生は」
「丈夫よ」
「お姉さまは」
「丈夫よ」
「塾の凡庸な音楽家の卵たちは」
「相変らず口が悪いのね、みんな丈夫」
それより千歳は、病気といって自分を呼び寄せた慶四郎の事情をも一度訊く気になった。
「ねえ、どうして、あんた病気だなんて私を呼んだ」
「そのことはもう言いっこなし」
「だって……変だわね、私、お金少し持って来たのに」
「そんな話、もうやめてお呉れ」
「変な人ね」
「ああ僕は昔から変な奴さ」
千歳は仕方がなくこんどは、さっき慶四郎がちょっと口を出した姉のことについて、ここで、もうすこし詳しく慶四郎と話し合おうとした。
「お姉さまも一緒に来ればよかった? お姉さま旅行すきでしたわね」
すると慶四郎は、一寸たちどまってまじまじ千歳の顔を見たが、
「仲子嬢の話は、きょうはこれ以上、して貰い度くないな」
と言って、またむっつり慶四郎は歩き出した。
曾我堂を過ぎ、旧街道湯本の茶屋に着いた。晩桜が咲いていた。
千歳は、ふと、着のみ着のままで父の家を出た慶四郎が、どうしてこのひと月を暮したか不思議がった。
「それ訊きたいわ」