Japanische Klassiker mit Furigana
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うたのたてやましんじゅういっきょく
唄立山心中一曲
泉 鏡花
Lesen Sie 唄立山心中一曲 (うたのたてやましんじゅういっきょく) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.835 Zeichen · 61 Bildschirme
汽車の進行中に、この出来事が発見された時、附添の騒ぎ方は……無理もないが、思わぬ麁であろう、失策した人物に対して、傍の見る目は寧ろ気の毒なほどであった。
一も二もない、したたかに詫びて、その革鞄の口を開くので、事は決着するに相違あるまい。
我も人も、しかあるべく信じた。
しかるにもかかわらず、その人物は、人々が騒いで掛けた革鞄の手の中から、すかりと握拳の手を抜くと斉しく、列車の内へすっくと立って、日に焼けた面は瓦の黄昏るるごとく色を変えながら、決然たる態度で、同室の御婦人、紳士の方々、と室内に向って、掠声して言った。……これなる窈窕たる淑女(――私もここにその人物の言った言を、そのまま引用したのであるが)窈窕たる淑女のはれ着の袖を侵したのは偶然の麁※(「勹<夕」、第3水準1-14-76)である。はじめは旅行案内を掴出して、それを投込んで錠を下した時に、うっかり挟んだものと思われる。が、それを心着いた時は――と云って垂々と額に流るる汗を拭って――ただ一瞬間に千万無量、万劫の煩悩を起した。いかに思い、いかに想っても、この窈窕たる淑女は、正しく他に嫁せらるるのである……ばかりでない、次か、あるいはその次の停車場にて下車なさるるとともにたちまち令夫人とならるる、その片袖である。