Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜんあくりょうめんねずみこぞう
善悪両面鼠小僧
国枝 史郎
Lesen Sie 善悪両面鼠小僧 (ぜんあくりょうめんねずみこぞう) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.231 Zeichen · 21 Bildschirme
「桜の花もいいけれど物言う花はもっと好い。引っ張って行って酌をさせろ!」
「合点!」と云うと不作法にも、二人を手籠めにしようとする。
「無礼者!」と柳眉を逆立て、乃信姫は礑と睨んだが、そんなことには驚かず、二人がお菊を引っ担げば、後の三人の無頼漢は、乃信姫を手取り足取りして、宙に持ち上げて駆け出そうとする。途端に老桜の樹陰から、
「待て!」と云う声が響き渡った。深い編笠に顔を隠した一人の武士がつと現われる。
「高貴のお方に無礼千万! 覚悟致せ!」と声も凜々しく、鉄扇でピシッと打ちひしぐ。
「わ――ッ、いけねえ! 邪魔が出たア!」
最初の勢いはどこへやら、五人揃って無頼漢共は雲を霞と逃げてしまった。
武士は静かに編笠を脱ぎ、
「浮雲い所でござりましたな。お怪我がなくて先ずは重畳、確か貴女様は細川の……」
「はい、乃信姫でござります。ようお助け下されました。あのう……」と云ったが急に口籠り、まぶしそうに侍の顔を見た。水の垂れるような美男である。侍と云うよりも歌舞伎役者、野郎帽子の若紫がさも似合いそうな風情である。それまで蒼かった姫の顔へポーッと血の気が差したものである。