Japanische Klassiker mit Furigana
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うそアつかねえ
嘘アつかねえ
山本 周五郎
Lesen Sie 嘘アつかねえ (うそアつかねえ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.523 Zeichen · 24 Bildschirme
などと云うことがある。おそらくそんな経験が幾たびかあったのだろう、なにかをじっとみとおしているような云いかたで、信吉は急に寒気のするような気持になったこともあった。……いちどなどは人を斬った侍がはいって来た。残暑の頃で、もう東の空が明るみだす時刻だったが、その侍は足音もさせずにぬっとはいって来て、酒を冷のまま湯呑へ注がせ、続けさまに三杯も呷った。こまかい白飛絣の帷子に絽の夏羽折を着ていた、痩せた小柄な躯つきで、眼が血ばしっていた。
「くだらないな、実にくだらない」四杯めを飲みながらそんなことを呟いた、「――世の中も人間も、生きていることも、……みんなくだらぬたわけたことだ」
侍はその血ばしった眼で、ときどき信吉のほうを見た。警戒するのでもなく相手を求めるのでもない。信吉を見はするが実は信吉を見るのではなく、心はまったくべつのほうにあるという眼つきだった。
「ばかなものだ、ちえッ、ばかなものだ」
そんな呟きも殆んど無意識だったろう、酒を五杯飲むと、途方もないほど多額な金を置いて、来たときのように足音もさせずに出ていった。
「ふられて来たというかたちだね」