Japanische Klassiker mit Furigana
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とらわれ
囚われ
豊島 与志雄
Lesen Sie 囚われ (とらわれ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.848 Zeichen · 42 Bildschirme
然しわざと装った平気が却って往々彼を狼狽させることが多かった。そしてそれが二人の間にある距てを置くように見えた。
「気持ちのいい晩ですね。」とある爽かな夜、彼は孝太郎に云った。
「ええ、」孝太郎は彼の顔を見上げた。
「こんな晩はぶらぶらと当もなく歩き廻るといいですがね。」
「そうですね。」
然し妙な沈黙が一寸彼等の間に落ちて来た。と急に恒雄は何かしきりに袂の中を探しはじめた。
「あそうだ……一寸急な手紙を一つ書くのがあったっけ。」
恒雄は独り言のようにこう云って自分の書斎に入ってしまった。
然し孝太郎はもう余り恒雄のことを気にかけてはいなかった。彼は自分自身に大きい問題を持っていたのである。
富子の様子が次第に変って来た。彼女は孝太郎に対しても大層言葉少なになった。然し彼女は彼の心をじっと探り当てようとでもするかのようであった。時々そっと覗くように彼の方を見る彼女の眼がそれを示していた。孝太郎はいつもそういう彼女の眼差しの前にたじろいだ。
孝太郎はよく自分の書斎の机に靠れて、日のさした障子の紙を見つめながら、富子と自分との間を考えてみた。進むか退くかどちらかに決定しなければならない問題が其処にあった。