Japanische Klassiker mit Furigana
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よっかのあやめ
四日のあやめ
山本 周五郎
Lesen Sie 四日のあやめ (よっかのあやめ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.200 Zeichen · 38 Bildschirme
そこには良人はいなかった。彼女は躊いもせずに寝間の襖をあけた。良人はそこにもいなかった。それで千世はさらにのぼせあがり、すぐに居間へ引返した。すると廊下から入って来る良人と顔を見合せた。主税介は手洗いにいって来たらしい、寝衣のままで、ふきげんに妻の顔を見た。千世は持っていた桃の花枝を彼に示した。
「これはあなたがなさいましたの」
千世の声はひきつっていた。
「そうだ」と主税介が云った。
「なぜです。なぜですの」と千世が云った。
「ゆうべ申上げたことがお気にいらなかったのですか、そうでございますか」
主税介は黙っていた。
「そうですのね」と千世は云った、「それならどうしてわたくしを叱って下さいませんの、わたくしのしたことが間違っていたのなら、わたくしを叱って下さればいい、お気の済むように打つなり蹴るなりして下さればいい、花をこんなになさるなんてひどうございますわ、花がなにを致しましたの」彼女の眼からまた激しく涙がこぼれた、「花に罪はございません、あんまりひどうございますわ」
そして崩れるようにそこへ坐ると、花枝を抱えたまま、袂で顔を掩って、声をあげて泣きだした。