Japanische Klassiker mit Furigana
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こくじはんのゆくえ
国事犯の行方
国枝 史郎
Lesen Sie 国事犯の行方 (こくじはんのゆくえ) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.341 Zeichen · 13 Bildschirme
「変だな」と二人は顔を見合わせた。
「赤井君!」と途端に声が掛かる。
「人違いだろう」と綱義は云ったが、両手を腰へ引き付けたのは、寄らば投げんと構えたのである。
「いや、貴郎ではありません」斯う云い乍ら一人の車夫が旅人の前へ突き進んだかと思うとプッと笠を叩き落した。
「何をするか、無礼者!」
叫ぶ旅人の鼻先へ一葉の写真を突き付けたが「是は赤井の写真です。貴郎と大変似ていましょうがな」
「成程」と旅人は苦笑したが「そう云えば何処か似ていますなァ。……ところで……君の姓名は?」
「警視庁の刑事、大井というものです」
「清水さん! もう迚も不可せん!」
「そうか、併し、残念だなあ」
綱義は暗然と云ったものである。
「赤井景韶神妙にしろ!」
改めて大井は一喝した。
「御苦労」と赤井は両手を出した。「警視庁刑事に縛られるなら縛られ甲斐があると云うものさ」
朝靄が晴れて日が昇り、初雪をキラキラと輝かせている。凶徒は縛に付いたのである。
×
彼等――赤井と松田とは――石川島を破獄するや、先ず深川永住町へ出で、折柄其処に供待していた、車夫宇田川三次郎(四十三)を嚇し、二人乗の俥を出させ、六道の辻まで曳かせて来たが、密告を恐れて三次郎を殺し、松田が三次郎の着物を着、赤井を乗せて俥を曳き、京橋区新肴町、元自由党の先輩たる