Japanische Klassiker mit Furigana
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こくじはんのゆくえ
国事犯の行方
国枝 史郎
Lesen Sie 国事犯の行方 (こくじはんのゆくえ) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.341 Zeichen · 13 Bildschirme
二
あらゆる近県の監獄に向かって破獄囚の有無が照会された。と、石川島監獄から直ぐに返辞があったのである。
赤井景韶、松田克之。いずれも凶猛の国事犯人が破獄したというのである。
二
一人のみすぼらしい旅人が、甲州谷村在宝村の大旗尋常高等小学校へ、深夜こっそり訪れて来た。校長に逢い度いと云うのである。
校長林信幸氏は、校内の一室に住んでいたが、室へ通して面会した。煮染めたような木綿の袷に帽子無しの頬冠り、乞食のような風采ではあったが、眉目も清秀で気品もあり何うやら学問もありそうだったので、乞いを入れて一泊させた。翌日身分を訊いて見ると信州長野在吉田村の士族、佐藤義範ということであった。年は二十三歳だと云う。
「大分学問もやられたようだが、何処で修業なされたな?」
「東京で少々漢籍の方を……」
「これから何方へお出でなさるな?」
「実は東京の人心が益々軽佻浮華に流れ見るさえ不愉快に存じますので修業を廃し故郷へ帰えり鋤鍬を持つ意りでございますが、偖故郷というところは案外予言者を入れぬもので、襤褸を纏った私などはさぞ虐待されることでございましょう」
「いやいやそんな事もござるまいが、もし帰えるのがお厭なら此処へお止りなさるがよい。