Japanische Klassiker mit Furigana
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ちはゆたかなり
地は饒なり
宮本 百合子
Lesen Sie 地は饒なり (ちはゆたかなり) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.874 Zeichen · 57 Bildschirme
一
一
或る日、ユーラスはいつもの通り楽しそうな足取りで、森から森へ、山から山へと、薄緑色の外袍を軽くなびかせながら、さまよっていました。銀色のサンダルを履き、愛嬌のある美くしい巻毛に月桂樹の葉飾りをつけた彼が、いかにも長閑な様子で現われると、行く先々のニムフ達は、どんなことがあっても見逃すことはありません。おだやかな心持のユーラスは四人の兄弟中の誰よりも、皆に大切にされ、いとおしがられていたのです。
陽気な、疲れることなどをまるで知らないニムフの踊りの輪から、ようようぬけた彼は、涼しさを求めて、ズーッと橄欖の茂り合った丘を下り、野を越えて、一つの谿間に入りました。そこはほんとに涼しくて、静かでした。岩や石の間には、夢のような苔や蘭の花が咲き満ちて、糸のように流れて行く水からは、すがすがしい香りが漂い、ゆらゆらと揺れる水草の根元を、針のように光る小魚が、嬉しそうに踊って行きます。
海にある通りの珊瑚が、碧い水底に立派な宮殿を作り、その真中に、真珠のようなたくさんの泡に守られた、小さな小さな人魚が、紫色の髪をさやさやと坐っています。
なんという綺麗なのでしょう。