Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ちはゆたかなり
地は饒なり
宮本 百合子
Lesen Sie 地は饒なり (ちはゆたかなり) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.874 Zeichen · 57 Bildschirme
太陽の照るうちは、それでもまぎれている彼女は、夜、特に月の大層美しいような晩には、その水のような光りの流れる部屋に坐りながら、何という慕わしさで、ついこの間まで続いていた「あの頃」を思い出したことであろう。
多勢の友達を囲りに坐らせて、キラキラと光るように綺麗な面白い話を、糸を繰り出すように後から後からと話していたときの、あんなにも楽しく仕合わせだった自分。
美くしい絵や、花床や、珠飾りを見ながら、心の中にいつの間にか滑りこんで来る仙女や、木魂や、虫達を相手に、果もない空想に耽っていた、あのときの夢のような心持。
自分がものを覚えるようになった日から続いていた幻の王国の領地で、或るときは杉の古木となり、或るときは小川となり、目に見えぬ綾の紅糸で、露にきせる寛衣を織る自由さえ持っていた自分は、今こうやって、悲しく辛い思いを独りでがまんして坐っている。
自分のすべての幸福と歓びは、皆もう二度と来ないあのときの思い出の中に眠っているのだろう。
彼女はあのときと、今とのこんなにも違う心持の間に、何の連絡も見出せなかった。
なぜ自分はこんなにも、辛い思いをしなければならないのだろう。