Japanische Klassiker mit Furigana
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こうふ
坑夫
Lesen Sie 坑夫 (こうふ) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 141.690 Zeichen · 283 Bildschirme
歩き出してから五六間の間は変に腹が立った。しかし不愉快は五六間ですぐ消えてしまった。と思うとまた足が重くなった。――この足だもの。何しろ鉄の才槌を双方の足へ縛り附けて歩いてるんだから、敏活の行動は出来ないはずだ。あの白い眼にじりじりやられたのも、満更持前の半間からばかり来たとも云えまい。こう思い直して見ると下らない。
その上こんな事を気にしていられる身分じゃない。いったん飛び出したからは、もうどうあっても家へ戻る了簡はない。東京にさえ居り切れない身体だ。たとい田舎でも落ちつく気はない。休むと後から追っ掛けられる。昨日までのいさくさが頭の中を切って廻った日にはどんな田舎だってやり切れない。だからただ歩くのである。けれども別段に目的もない歩き方だから、顔の先一間四方がぼうとして何だか焼き損なった写真のように曇っている。しかもこの曇ったものが、いつ晴れると云う的もなく、ただ漠然と際限もなく行手に広がっている。いやしくも自分が生きている間は五十年でも六十年でも、いくら歩いても走ても依然として広がっているに違いない。ああ、つまらない。歩くのはいたたまれないから歩くので、このぼんやりした前途を抜出すために歩くのではない。