Japanische Klassiker mit Furigana
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まど
堀辰雄集 新潮日本文学16
堀 辰雄
Lesen Sie 堀辰雄集 新潮日本文学16 (まど) von 堀 辰雄 (ほりたつお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 58.906 Zeichen · 119 Bildschirme
その車の中によろめくようにお乗りになってから、森さんは私たちの方へ帽子にちょっと手をかけて会釈されたきりだった。……その車が又埃を上げながら立ち去った後も、私たちは二人ともパラソルでその埃を避けながら、何時までも黙って草の中に立っていた。
去年と同じ村はずれでの、去年と殆ど同じような分れ、――それだのに、まあ何と去年のそのときとは何もかもが変ってしまっているのだろう。何が私たちの上に起り、そして過ぎ去ったのであろう?
「さっき此処いらで昼顔を見たんだけれど、もうないわね」
私はそんな考えから自分の心を外らせようとして、殆ど口から出まかせに云った。
「昼顔?」
「だって、さっき昼顔が咲いていると云ったのはお前じゃなかった?」
「私、知らないわ……」
お前は私の方をけげんそうに見つめた。さっきどうしても見たような気のしたその花は、しかし、いくらそこらを眼で捜して見てももう見つからなかった。私にはそれが何だかひどく奇妙なことのように思われた。が、次ぎの瞬間にはこんなことをひどく奇妙に思ったりするのは、よほど私自身の気もちがどうかしているのだろうという気がしだしていた。