Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ほうおんき

報恩記

芥川 竜之介

Lesen Sie 報恩記 (ほうおんき) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.803 Zeichen · 30 Bildschirme

Aozora Bunko

わたしはその夜嬉しさの余り、いつまでも独り笑いながら、同じ言葉を繰返していました。――「甚内の身代りに首を打たれる。甚内の身代りに首を打たれる。………」

甚内の身代りに首を打たれる――何とすばらしい事ではありませんか? そうすれば勿論わたしと一しょに、甚内の罪も亡んでしまう。――甚内は広い日本国中、どこでも大威張に歩けるのです。その代り(再び笑う)――その代りわたしは一夜の内に、稀代の大賊になれるのです。呂宋助左衛門の手代だったのも、備前宰相の伽羅を切ったのも、利休居士の友だちになったのも、沙室屋の珊瑚樹を詐ったのも、伏見の城の金蔵を破ったのも、八人の参河侍を斬り倒したのも、――ありとあらゆる甚内の名誉は、ことごとくわたしに奪われるのです。(三度笑う)云わば甚内を助けると同時に、甚内の名前を殺してしまう、一家の恩を返すと同時に、わたしの恨みも返してしまう、――このくらい愉快な返報はありません。わたしがその夜嬉しさの余り、笑い続けたのも当然です。今でも、――この牢の中でも、これが笑わずにいられるでしょうか?

わたしはこの策を思いついた後、内裏へ盗みにはいりました。