Japanische Klassiker mit Furigana
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しおばな
塩花
豊島 与志雄
Lesen Sie 塩花 (しおばな) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.421 Zeichen · 25 Bildschirme
爪の先を、鑢で丹念にみがきながら、山口専次郎は快心の微笑を浮かべた。
――盲目的に恋する者はいざ知らず、意識的に恋をする者は……。
この、意識的に恋をするという自覚が、なにか誇らしいものと感ぜられたのである。そして今や、それにふさわしいだけの身づくろいが出来上りつつあった。
手の爪をみがくのが終りである。足の爪はもうきれいにつんであった。顔はきれいに剃られて、香りのよいクリームが皮膚にすりこまれていた。頭髪は昨日洗われたばかりで、櫛の歯が目立たぬようにとかされていた。髪を分けるのは気障であり櫛の歯の跡を残すのは野暮であって、長髪をふうわりとそして自然らしくとかすのが現代的技巧であった。
――なりふり構わずに女を想いつめる、そんな青年をよく見かけるが、それはただ性慾の奴隷にすぎない。真の恋をする者、つまり、精神と肉体との一如の恋をする者には、それにふさわしいだけの身だしなみがあるべき筈だ。風呂には、少くとも三日に一度ははいる。頭髪は、少くとも一週に一度は洗う。髯は、少くとも隔日に剃る。爪はいつも、長すぎず短かすぎず、そして決して垢を止めない。頸筋はもとより、特に耳朶を、きれいにしておく。