Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼちてんぼうてい
墓地展望亭
久生 十蘭
Lesen Sie 墓地展望亭 (ぼちてんぼうてい) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 46.485 Zeichen · 93 Bildschirme
竜太郎は、度を失って、もうすこしで叫び出すところだった。
あの夜、少女がなぜ名を名乗らなかったか、あす自殺するつもりだというと、なぜ、急にあの細い指が絡みついて来たのか、迂濶にも、今になって、竜太郎は初めてその意味を了解した。
明日はもうこの世にいない男だから、それで、ひと夜の気紛れの相手に撰んだのだった。なにしろ、死人に口はないのだから、あと腐れもなかろうし。――なんという抜目のなさ!
(なるほど、そういうわけだったのか)
竜太郎の胸の裏側を、何か冷たいものが吹いて通る。佗びしいとも、やるせないとも言いようのない寒々とした気持だった。
しょせん、戯れにすぎなかったのだ。あの夜の離れて行きかたが、よくそれを表明している。たとえ、わずかばかりでも真実らしい思いがあったら、けして、あんな別れかたはしまい。揺り起して、別れの言葉のひとつぐらいは言うであろう。それを、眠っているのを見すまして、逃げるように行ってしまった。
あの愛らしい唇から、あんなにも優しく呼びかけあんなにもいくども誓った、あのかずかずの言葉は、みな、その場かぎりのざれごとだったのだ。
竜太郎は、胸の中で、苦々しく、呟く。