Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼちてんぼうてい
墓地展望亭
久生 十蘭
Lesen Sie 墓地展望亭 (ぼちてんぼうてい) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 46.485 Zeichen · 93 Bildschirme
(たしかに、今まで見たどの女性より美しい)
しかし、そのために格別心を乱されるようなことはなかったので、沈み切った声で、もう一度繰り返した。
「失礼ですが、お嬢さん、それは、私の椅子です」
ちょうど、そこに赤い葩がひとつ落ち散っているようにも見えるかたちのいい唇を、すこし開けて、竜太郎の顔をふり仰いだまま、返事もしなければ、まじろぎもしないのである。
竜太郎は、丁寧に、もう一度くりかえした。
「あなたは、私の席に坐っていらっしゃるんです、お嬢さん」
少女はようやく身動きした。夢のつづきをふり払おうとでもするように軽く頭をふると、
「なんとおっしゃいましたのですかしら」
その声の中には、この世で最も清純なもののひびきがあった。
「その椅子は、私がひとりでいるために、とってあるのだともうしあげているんです」
少女は、ゆっくりと顔をふせて、
「あら、そうでしたの。ちっともぞんじませんでしたわ、あたし」
それで、立上るかと思いのほか、ずれ落ちていた鼬鼠のケープを肩に纒いつけると、のびのびと脚を伸ばしながら、落着いた声で、
「あたくしも、そうなの。……あたしも、ひとりでいるほうが好きなの」