Japanische Klassiker mit Furigana
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ばいしょくかもなんばん
売色鴨南蛮
泉 鏡花
Lesen Sie 売色鴨南蛮 (ばいしょくかもなんばん) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.926 Zeichen · 28 Bildschirme
再び、おや、と思った。
と言うのは、このごろ忙しさに、不沙汰はしているが、知己も知己、しかもその婚礼の席に列った、従弟の細君にそっくりで。世馴れた人間だと、すぐに、「おお。」と声を掛けるほど、よく似ている。がその似ているのを驚いたのでもなければ、思い掛けず出会ったのを驚いたのでもない。まさしくその人と思うのが、近々と顔を会わせながら、すっと外らして窓から雨の空を視た、取っても附けない、赤の他人らしい処置振に、一驚を吃したのである。
いや、全く他人に違いない。
けれども、脊恰好から、形容、生際の少し乱れた処、色白な容色よしで、浅葱の手柄が、いかにも似合う細君だが、この女もまた不思議に浅葱の手柄で。鬢の色っぽい処から……それそれ、少し仰向いている顔つき。他人が、ちょっと眉を顰める工合を、その細君は小鼻から口元に皺を寄せる癖がある。……それまでが、そのままで、電車を待草臥れて、雨に侘しげな様子が、小鼻に寄せた皺に明白であった。
勿論、別人とは納得しながら、うっかり口に出そうな挨拶を、唇で噛留めて、心着くと、いつの間にか、足もやや近づいて、帽子に手を掛けていた極の悪さに、背を向けて立直ると、雲低く、下谷、神田の屋根一面、雨も霞も漲って濁った裡に、神田明神の森が見える。