Japanische Klassiker mit Furigana
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つぼ
壺
山本 周五郎
Lesen Sie 壺 (つぼ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.624 Zeichen · 34 Bildschirme
一
一
寛永十二年十一月の或る日、紀伊のくに新宮の町の万字屋という宿に、木村外記となのる中年の武士が来て草鞋をぬいだ。背丈のすぐれて高い、骨ぐみのがっちりとした、いかにも精悍なからだつきだし、浅黒い膚の面ながな顔にぐいと一文字をひいたような眉や、ひき結ぶと少しうけくちになる口もとや、そしてときどきひじょうに鋭い光りを放つ双眸など、すべてが逞しい力感に満ちているが、そういう風貌とは反対に着ている物も粗末だし、挙措も言葉つきも鄭重でものしずかだったから、心なく見る眼にはちょっと近づきにくいというだけで、ごく平凡な、ありふれた武家のひとりとしかうつらなかった。……食事のときにお島という婢が「お武家さまも本宮へご参詣でございますか」そう訊くと、木村外記という武士はそうだと頷いた。新宮は紀州徳川家の国老のひとり水野出羽守の所領(三万五千石)でその居城があり、まわりには熊野本宮、新宮、那智神社、補陀落寺、那智ノ滝など名所が多く、山川の風光も美しかったから、四季おりおりに探勝の杖をひく人が絶えない、夫木、玉葉、新古今などの歌集にもこのあたりを詠んだ