Japanische Klassiker mit Furigana
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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
Lesen Sie 夏の葬列 (なつのそうれつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.161 Zeichen · 122 Bildschirme
さらに拍車をかけたのが妻の言葉だった。ある夜、愛撫のあと、妻がいった。
――おかしいのよ。私が行くでしょ? するとね、いつも、上からも下からも、きまってお手洗いの音がするのよ。みんな同じなのね。
とたんにぼくは妻のからだから手をはなした。ぼくは想像したのだ。ぼくら団地の夫たちが、無言の号令を聞いたように、夜、いっせいに同じ姿勢をとり、同じ運動をはじめるのを……。
以来、ぼくはそのことにも気のりうすになった。ぼくは、妻のもらす声を聞くたび、全団地の細君たちがおそらく同時にもらしているだろう呻き声の大合唱を、闇のなかに聞くような気がしてくる。無意識のうちに、ぼくは顔をしかめている。ああ、なんという画一性!
結局、ぼくらはそれが自分だけのものだと信じながら、じつは一人一人、規格品の人間として、規格品の日常に、規格品の反応を示しているだけのことではないのか? それが自分だけのものだと錯覚して、じつは一人一人、目にみえぬ規律に統一され、あやつられて毎日をすごしているのではないのか?
ぼくは耐えられない。ぼくは人形なんかじゃない! あやつり人形ではない!
いったい、自分が自分以外のだれでもないという確信ももてずに、どうして自分の生活を大切にすることができる? 妻を愛することができる? 妻から愛されていると、信じる