Japanische Klassiker mit Furigana
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よるのよろこび
夜の喜び
小川 未明
Lesen Sie 夜の喜び (よるのよろこび) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.768 Zeichen · 4 Bildschirme
私は、夜を讃美し、夜を怖れる。
青い、菜の葉に塩をふりかけて、凋れて行く時の色合のような、黙って、息を止めているような、匂いはないけれど、もしこれを求めたら、腥い匂い、それも生々しい血汐の流れている時分の臭いでなく、微かに、ずっと前に、古くからそこに残っている匂いがするような、青い月夜もある。
風もなく、雨も降らず、大空には星の光りも隠れて、しかも厚い鉄板を頭の上に張り詰めたような重苦しい、大きな音を立てても、音の通らないような、次第次第に、何等か大きな黒い楯が迫って来て、息の音を圧してしまいそうな闇の夜もある。
そして、この青白い月夜と黒色の闇の夜とは、私に性質の異った恐怖を与えている。
「お繁さんも、この頃のように、ああ無駄目が見えるようになっては長くあるまい。」……とは、私の母がいった言葉である。
私は、家の前の戸口に立って、青白い薄い帛をこの世の上にかけたような、草木の葉の、色艶も失せて凋れている景色を眺めた。思いなしか、空の色もうるんで、張っている糸の結び目がほぐれたように、不安な月の色は、病女の怨めしげな、弱った吐息を吹きかけて、力なく拭った鏡のように、底気味の悪い、淋しいうちに、厭らしい光りを落していた。