Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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よるのちょう

夜の蝶

山本 周五郎

Lesen Sie 夜の蝶 (よるのちょう) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.345 Zeichen · 21 Bildschirme

Aozora Bunko

と老人は云った。「おめえたちにわかる道理がねえ。現に育ての親も同様なおかみさんでさえ、わからねえんだ。旦那は仏さまになったから知ってるだろう。おれにもわかる。仏さまになった旦那とおれにはわかるが、ほかの者にゃあ、わかりゃあしねえ。わかりゃしねえとも、わかってたまるもんか」

旅装の客は両肱をついて頬を支え、老人の言葉を聞きながら眼をつむった。

「人間なんて悲しくって、ばかで、わけの知れねえもんだ」老人はこう云って泣きだした。「人間なんてものは、みんな聾で盲目で、おっちょこちょいなもんだ。ざまあみやがれ」それから泣き声をふり絞るようにどなった。「おめえたちにゃあ、ほんとのこたあ、わからねえ。おめえたちにも誰にも、わかりゃしねえ。高次ってえ人がなにをしたか、どんな気持で京伝から消えていったか、誰にもわかりゃしねえんだ。わかりっこはねえんだ。ざまあみろ」

老人の手放しで泣く声が、やや暫く囲いの中へ波紋のように揺れひろがっていた。旅装の客は顔をあげ「勘定」と云って、ふところから財布を出した。竹造と勇吉の二人は何か笑いながら話し興じている。六兵衛はみれんな眼つきで、「もうお帰りですかい」