Japanische Klassiker mit Furigana
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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
Lesen Sie 夜の靴 (よるのくつ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.056 Zeichen · 213 Bildschirme
私は一日に四杯、他のものは十杯ずつ三人、併せて一升と少しで足りるのに、私のいる家の参右衛門の所では同数の家族だのに四升でまだ足りぬ。私はいつか一日四杯だと話すと、「ふうッ。」と呼吸を吐いた参右衛門、じろじろ私の顔を眺めていてから、「人じゃないの。」と云ったことがある。
ところが二三日前の朝のことだが、どんぶり鉢が炉端で転がる激しい音を立てたことがある。同時に、
「二升米食うやつあるか。」と参右衛門は呶鳴りつけた。
訳を訊くと、次男の二十三になる白痴の天作が、新米に代った日、思わず二升ひとりで食べたということだった。運悪くその前夜久左衛門が来て、大阪の商人で一俵千円で村の米を買ったという話のあった折だった。五円が村の相場となっているときの千円の値は、驚倒すべき事件で、そのときから米価は鰻のぼりに騰って来たが、まだ東京の値など村のものには話せない。
十月――日
出払って誰も人のいない家の中に、拭き磨かれた板の間が黒く光っていて、そこを山羊がことこと爪音を立てて歩いている。追おうかと思ったが私はやめて見ていた。純白の毛が広い板の間の光沢に泛き出し、貴族の館のような品位であたりが貴重な彫刻を見るようだ。