Japanische Klassiker mit Furigana
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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
Lesen Sie 夜の靴 (よるのくつ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.056 Zeichen · 213 Bildschirme
夜、家人がみな寝てしまったころ、長男がひょっこり東京から帰って来た。自家の畑で採れたさつま芋をリュックに一杯つめていて、ひどく疲れている様子だ。今年初めて採れた畑の芋なので私は袋の口を開け、芋の頭を一寸撫でてから寝た。
「どうだった東京。」妻は起きてきて子供に訊ねた。
「面白いよ、ジープがぶうぶう通っている。」
「餓え死にしてる人、沢山いて?」
「そうだね。僕、朝からピアノばかり弾いていて外へなんか出なかったから、分らない。」
「つまらないこと、東京のお話たったそれだけね。」
私と妻は、東京から来た客ということだけで、子供まで別人になったように見ている人間に、いつの間にかなっている。そろそろ私一人だけでも帰ろうと思う。ただ私としては収穫時を見終ってしまいたいと思うだけだが、村人の親切さに対してこれ以上、観るという心でいることに耐えられそうにもない。
十月――日
ときどき我ながらいやな気持ちが起って来る。私が疎開者同様のくせにどこか疎開者らしくない気持ちの起ることだ。事実、私はまだ東京の所帯主でここでは私の妻が所帯主になっている。妻と子供が疎開者で私だけはそうではなく、研究心をもって来ていることが、一つの義務だと思うある観想の仕わざのためだ。