Japanische Klassiker mit Furigana
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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
Lesen Sie 夜の靴 (よるのくつ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.056 Zeichen · 213 Bildschirme
祭日には参右衛門の末の娘はここから自分の家へ帰って来る。そして、餅など食べているのを私はよく見るが、今夜は家で泊って行きたいと娘が云うときも、
「お前は奉公してるんだからのう。やっぱり、大屋さんへ帰って寝るもんだ。良いか、今夜は帰れよ。」
と、参右衛門はこう静に娘をさとしている。娘は泣き顔で戻って行くが、負けん気の参右衛門も、このようなときは、さすがに声は低く娘に詫びを云うように悄気ている。殊に、後三四日もすれば、別家の久左衛門の十九のせつ女の結婚式が迫っているからには、十七の自分の娘の身の上も、そろそろ考えてやらねばなるまい。私は出来る限り、同じ金銭を落すものなら、ここの家へ落して帰りたいと思っているのだが、
「おれは金はいらん、あんなものは――」
と、久左衛門への対抗か、むかしの旦那風の名残りは、手出しの仕様もない。実際、金を少しは欲しがってくれる人間もいてくれねば、不便なことが多くて困るものだ。私たちはこの参右衛門の家にいて、まだここから一升の米さえ買っていない。無論、貰ったこともない。
十一月――日
突然のことだが、意外なことが起って来た。東京から農具を買い集めに来た見知らぬ一人の男が、参右衛門の所へ薪買いに来て、東京へ貨車を買切りで帰るのだが、荷の噸数が不足して貨車が出ない。