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Japanische Klassiker mit Furigana

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よるのくつ

夜の靴

横光 利一

Lesen Sie 夜の靴 (よるのくつ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.056 Zeichen · 213 Bildschirme

Aozora Bunko

」

こう久左衛門が云うところを見ても、彼なら、分るようにしてあるにちがいあるまい。彼は、この村で農業というものにうち勝った唯一の人物だ。その上、私に神のことさえ口走ったのは打算でいう必要などどこにもない。まさか神まで私に売ろうとは彼とて思ってはいなかろう。

「神は気持ちじゃ、人の気持ちというものじゃ。」

六十八年伝統との苦闘の後、ついに掴んだ久左衛門の本当の財宝はそういうものであったのだ。後はただ死ねばもう彼は良いのだ。

十一月――日

雪が舞っている。私の荷の出る時間が迫って来た。結婚式のある久左衛門の裏口から出て来た参右衛門は、袴をつけたまま、荷物を荷馬車の上に舁ぎこんだ。馬子が手綱で一つひっ叩くと、鬣を振り上げた馬は躍り上り、車が動いていった。私の荷は薄雪の中に見えなくなった。人より荷の方がつよく生きぬいて来たように見えるのは、どうしたことだろう。私は雪の中に立って轍の音の遠ざかるのを淋しく聞きながら、家の中へ這入った。

せつの式は新庄の婿の家で挙げられている。久左衛門の宅では留守式で、清江や私の妻は手伝いに行ききりだったが、夜になって、祝いが崩れ、乱酔した参右衛門の声が炉端から聞えて来た。