Japanische Klassiker mit Furigana
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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
Lesen Sie 夜の靴 (よるのくつ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.056 Zeichen · 213 Bildschirme
ふと、家の参右衛門のなまけ癖が、廂からの日ざしを受けたお臍のあたりにへこんで見えて、垢を擦る。しかし、敗戦の日の私の物思いは、こんなことでは片附きそうもない。私は、今は何も云いたくはない。
この浴場の屋根の上に露台がある。そこから右の砂丘の向うに、煙筒のかすかに並んだ岬の見えるのが、最上川の河口である。そこが酒田だ。捕虜収容所もあの煙筒の下の方にある。終戦の前日まで、そこで捕虜を使っていた日通のある人が云ったこと――
「軍人という奴は、どいつもこ奴も、無頼漢ばかりだ。」
またか、と初めは思って、私にこの話をした青年は、聞くのを躊躇したそうだ。この青年も復員軍人だ。
「捕虜に食わせる食い物なんて、あれや無茶だ。人の食う物じゃない。気の毒で気の毒で、もう見ちゃおれん。」と、日通は云った。
軍人を攻撃するのは田舎でも流行だが、これは少し流行から脱れた権幕である。罵倒も飛び脱れた大声だと、反感を忘れ、どういうものかふと人はまた耳を傾ける。
この日通の人の使っている下働きの荷車曳きに、この地方特有の敦樸な者がいた。この若ものは仕事からの帰途、毎夜一緒に働いている捕虜をこっそり自分の家へ連れ込んで、食べたいだけ物を食べさせてやっていた。