Japanische Klassiker mit Furigana
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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
Lesen Sie 夜の靴 (よるのくつ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.056 Zeichen · 213 Bildschirme
しかし、あ奴は米がないと云ってるくせに、豆の配給となると、米より豆の方が良いといって、第一番に跳んで行くではないかと怪しむもの。いや、あそこへ米を借りに行ったら、兄だのに二升の米さえ弟に渡さなかったという。それで参右衛門は気の毒がって、自分がいま嫁の実家から借りて来たばかりの一斗分を、二升それに貸してやる。
「このごろのようなことは、この村始まってからないことじゃ、良い語り草になるじゃろう。」と一人がいう。
雨戸や板戸へ敲きつけられる木の枝。樹木のめりめり倒れる音。鳴きつづける山鳩の憂鬱な声。右往左往して揺れ暴れる稲の穂波。割れ裂けるガラス窓。水面の青葉をひっ冠ったまま跳ね上る鯉。
そこへ私にここ参右衛門の一室を世話してくれた別家の久左衛門が這入ってくる。この老人の完納者は、朝から米を借りにくるものらを断りつづけ、疲れはてた様子で、いつもより早口になっている。声も高い。
「死ぬ、死ぬ、いうて、朝からもう、来るわ来るわ。米を貸してやるのは人情だ。けれども、毎年貸してばかりで、借りる方は、借りるのを当然だと思うて有難がりもしやしない。今年も貸してやるとなると、借りたものが助かって、貸したものが死ぬじゃないか。