Japanische Klassiker mit Furigana
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やこうちゅう
夜光虫
織田 作之助
Lesen Sie 夜光虫 (やこうちゅう) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 66.871 Zeichen · 134 Bildschirme
昨夜の雨はもうやんでいた。
午前六時といえば、この界隈のビル街もひっそりと静まりかえって、人通りもない。
「なんだ、人間は一匹もおらへんのンか」
豹吉はそれがこの男の癖の唾をペッと吐き捨てた。
その拍子に、淀川の流れに釣糸を垂れている男の痩せた背中が、眼にはいった。
そこは渡辺橋の南詰を二三軒西へ寄った川っぷちで、ふと危そうな足場だったから、うしろから見ると、今にも川へ落ちそうだった。
豹吉はその男の背中を見ていると、妙にうずうずして来た。
今日の蓋あけに出くわしたその男の相手に、何か意表に出る行動がしたくてたまらなくなったのだ。はや悪い癖が頭をもたげたのだ。
「何でもええ。あっというようなことを……」
考えているうちに、
「――そうだ、あの男を川へ突き落してやろう」
豹吉の頭にだしぬけに、そんな乱暴な思いつきが泛んだ。
「煙草の火かしてくれ」
豹吉は背中へぶっ切ら棒な声を掛けた。
「…………」
男はだまって振り向くと、くわえていた煙草を渡した。火を移して、返そうとすると、
「捨ててくれ」
そして、男はべつの新しい煙草を取り出して、火をつけた。
豹吉は何だかすかされたような気がして、