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Japanische Klassiker mit Furigana

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やこうちゅう

夜光虫

織田 作之助

Lesen Sie 夜光虫 (やこうちゅう) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 66.871 Zeichen · 134 Bildschirme

Aozora Bunko

けッ、けッ、けッ……」

黒い顔じゅう皺だらけにして笑うと、

「――チケットも持ったはれしめへんでしたか」

「チケット……?」

「荷物を預けはった……」

「あ。じゃ、貴様だなア……」

君が貴様に変った。

「え、へ、へ……」

「こいつッ!」

と、撲ろうとすると、亀吉は、

「あ、ちょっと、待っとくなはれ、待っとくなはれ。まア、きいとくなはれ」

「よし、きこう」

「実は、掏ったことは掏りましたけど、復員のお方のものを掏ったら悪いと、こない思い返しましてな……」

亀吉は頭をかいて、

「――あんたを探し出して、返そうと思って、かけずり廻ってましてン。――いま、返しまっさかい、堪忍しとくなはれ」

「ふーン」

小沢は思わず亀吉の黒い顔を、黒い顔だなアと微笑しながら、見つめた。

「――しかし、持ってないじゃないか」

「え、へ、へ……。売り飛ばしましてん。買い戻そうと思って、行ってみましたら、もう売れてけつかったちゅうわけで……」

「…………」

「そんな怖い顔せんとくなはれ。その代り、売った金は返しまっさかい」

そう言って、上衣のポケットに手を入れた途端、亀吉は、

「あッ!」

と、真青になった。

落したのか、掏られたのか、二千円の金はいつの間にかなくなっていたのだ。