Japanische Klassiker mit Furigana
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やこうちゅう
夜光虫
織田 作之助
Lesen Sie 夜光虫 (やこうちゅう) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 66.871 Zeichen · 134 Bildschirme
二人の職場へ、一人の少女が黙々として近づいて来た。
黙々として――といったのは、実は、その少女は唖なのだ。
読者には、もはや明瞭だろう。――梅田の闇市場の食堂から、怪しげな刺青の男に連れ出された例の唖の娘だ。
彼女はそっとあたりを見廻すと、素早く罐の中へ手を突っ込んだ。
そして今日一日の次郎、三郎の儲けの金を鷲掴みにしたが、瞬間びっくりしたように飛び上ると、ブルブルふるえる手で、その金を罐の中へ戻した。
そして、暫らくふるえながら佇んでいたが、思い切ったように、もう一度手を突込んだ。
やはり手がふるえた。が、こんどは札束を掴んだ途端、彼女はうしろも見ずに、ぱっと逃げ出した。
歯がカチカチと鳴った。ふるえが停らぬのだ。
そのまま、鴈治郎横丁まで逃げて来た時、
「ちょっとお待ち!」
と、いきなり、肩を掴まれた。
「…………」
ぎょっとして振り向いた。
肩を掴んだのは「ヒンブルのお加代」――またの名「兵古帯のお加代」だ。
相変らず前髪を垂らし、薄暗がりで黒色に見えるが、兵古帯の色はいつも紫だ。
「う、う、う……」
うめくような、恐怖の声を、唖娘は痩せた喉から絞り出した。