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Japanische Klassiker mit Furigana

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やこうちゅう

夜光虫

織田 作之助

Lesen Sie 夜光虫 (やこうちゅう) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 66.871 Zeichen · 134 Bildschirme

Aozora Bunko

「…………」

次郎は棒のように突っ立っていたが、やがてきっと眼を輝かせると、

「三郎公、おれ掏摸になるッ!」

と呶鳴るように言った。

「えッ……?」

「正直に靴みがきして、母ちゃんを養うてても、悪い奴にみな金を盗まれてしまうやないか。こんな損なことがあるもんか。正直に働いたら、阿呆な眼を見るだけや。よしッ! もうこうなったらやけくそや。掏摸になる」

次郎はそう言って、きっと前方を睨みつけた時、一人の著流しの男が通り掛った。鴈治郎横丁を出て来たガマンの針助だった。

「よしっ! あの男を掏ったるッ!」

次郎はそれと知らずにガマンの針助の袂へじっと眼をつけた。

ガマンの針助の袂は、中へ入れたものの重みで、だらんと下へ垂れていた。

「あの中に財布がはいっとるのや」

次郎は子供ながらそう睨んで、

「――おい三郎公、ついて来い」

と、声をひそめて云いながら、針助のあとをつけて行った。

三郎は、

「うん」

という声も出ず、唇が真青になるくらい緊張して、ブルブルふるえる足で、次郎のうしろからついて行った。

針助はゆっくりした足取りで、戎橋通を北へ真っ直ぐ、電車道へ出ると、地下鉄の入口の灯が夜光虫のように夜のとばりの中で、ひそかに光っている上本町六丁目行きの停留所の方へ、折れて行った。