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Japanische Klassiker mit Furigana

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やこうちゅう

夜光虫

織田 作之助

Lesen Sie 夜光虫 (やこうちゅう) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 66.871 Zeichen · 134 Bildschirme

Aozora Bunko

停留所には十人ばかり客が列を作って、電車を待っていた。

針助はその一番うしろへ並んだ。

ひそかにつけていた次郎は、何くわぬ顔で針助のうしろへ立った。三郎はカチカチ歯を鳴らしながら、不安そうに次郎により添うた。

そして、そっと次郎の袖を引いて、

「兄ちゃん、掏摸になるのン、やめとけ!」

と、眼まぜで知らせたが、次郎は、

「…………」

だまって首を振って、じっと針助の袂をにらんでいた。

しかし、さすがに手は出せなかった。針助に隙がないのか、いや、次郎に勇気がないのだ。おまけに、袂へ手を入れるきっかけがない。

「今や、今や、手エ入れるんやったら、今や」

と、いたずらに頭の中で叫んでいたが、しかし、いくら掏摸になるんだとやぶれかぶれの覚悟をきめても、はじめての経験では、他人の袂に無断で手を突っ込むということは、よほど魔がささねば出来なかった。

悪の魔――次郎にはまだそれが訪れて来ないのだ。

ところが、やがて電車が来て、並んでいた人々が動き出し、針助も二三歩前へ進みかけた途端、次郎は何かあわてて、いきなり針助の体を押すように、ぺたりと背中へ自分の体をつけた。

その拍子に次郎の手が針助の袂に触れた。