Japanische Klassiker mit Furigana
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やこうちゅう
夜光虫
織田 作之助
Lesen Sie 夜光虫 (やこうちゅう) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 66.871 Zeichen · 134 Bildschirme
次郎ははじめて意識を取り戻して、そう呟いた。が、三郎を残して、自分ひとり逃げては、三郎は可哀想だと思って、じっとしていた。
そして、金を渡した針助が、再び次郎の手首を掴もうとすると、次郎の方から手を出したくらい、もう何もかも素直に諦めていた。
針助は電車を降りると上本町八丁目の方へ歩いて行った。七丁目の、もと停留所のあったところに、交番の灯が見えた。
「向うへ連れて行くんやな」
次郎と三郎はお互の青ざめた情けない顔を見合ったが、針助は黙々として、その前を通り過ぎた。交番の中では、若い少年巡査がきょとんとした眼で、こちらを見たが、べつに誰何しようともしなかった。
次郎と三郎はほっとした。そして、
「一体どこイ連れてゆくんやろ」
と思って引きずられて行くと、外語学校前を東へ折れ、四ツ辻まで来ると、南へ曲った。
そして半町も行った頃だろうか、門燈のあかりが鈍く点っているしもた家の前まで来ると、針助は立ち停った。
「ここや」
針助は袂から鍵を出して、玄関の戸をあけると、
「――はいれ」
家の中はひっそりとして、人の気配はなかった。針助の一人ぐらしの家らしい。
それがかえって、薄気味わるかった。