Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Lesen Sie 夜明け前 (よあけまえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.172 Zeichen · 206 Bildschirme
とりあえず、その話を簡単に多吉の耳に入れて置いて、やがてその足で彼は二階の梯子段を上って行って見た。夕日は部屋に満ちていた。何はともあれ、というふうに、彼は恭順から借りて来た友人の日記を机の上にひろげて、一通りざっと目を通した。「東行日記、巳五月、蜂谷香蔵」とある。鉄胤先生もまだ元気いっぱいであった明治二年のことがその中に出て来た。同門の故人野城広助のために霊祭をすると言って、若菜基助の主催で、二十余人のものが集まった記事なぞも出て来た。その席に参列した先輩師岡正胤は当時弾正大巡察であり、権田直助は大学中博士であり、三輪田元綱は大学少丞であった。婦人ながらに国学者の運動に加わって文久年代から王事に奔走した伊那伴野村出身の松尾多勢子の名もその参列者の中に見いだされた。香蔵の筆はそうこまかくはないが、きのうはだれにあった、きょうはだれを訪ねたという記事なぞが、平田派全盛の往時を語らないものはない。
医者の文箱に入れてあったせいかして、なんとなく香蔵の日記に移った薬のにおいまでが半蔵にはなつかしまれた。彼は友人と対坐でもするように、香蔵の日記を繰り返してそこにいない友人の前へ自分を持って行って見た。