Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Lesen Sie 夜明け前 (よあけまえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.172 Zeichen · 206 Bildschirme
江戸の名ごりのような石榴口の残った湯屋はこの町からほど遠くないところにある。朱塗りの漆戸、箔絵を描いた欄間なぞの目につくその石榴口をくぐり、狭い足がかりの板を踏んで、暗くはあるが、しかし暖かい湯気のこもった浴槽の中に身を浸した時は、ようやく半蔵も活き返ったようになった。やがて、一風呂あびたあとのさっぱりした心持ちで、彼が多吉と共にまた同じ道を帰りかけるころは、そこいらはもう薄暗い。町ではチラチラ燈火がつく。宿に戻って見ると、下座敷の行燈のかげに恭順が二人を待ちうけていた。
「金丸先生、今夜はお隅のやつが手打ち蕎麦をあげたいなんて、そんなことを申しています。青山さんの御相伴に、先生もごゆっくりなすってください。」
「手打ち蕎麦、結構。」
亭主と客とがこんな言葉をかわしているところへ、お隅も勝手の方から襷をはずして来て、下女に膳をはこばせ、半蔵が身祝いにと銚子をつけて出した。
「まったく、こういう時はお酒にかぎりますな。どうもほかの物じゃ納まりがつかない。」と恭順が言う。
半蔵も着物を改めて来て簡素なのしめ膳の前にかしこまった。焼き海苔、柚味噌、それに牡蠣の三杯酢ぐらいの箸休めで、盃のやりとりもはじまった。