Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Lesen Sie 夜明け前 (よあけまえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.172 Zeichen · 206 Bildschirme
「青山さん、まだ裁判所からはなんとも申してまいりませんか。」
新しい正月もよそに、謹慎中の日を送っている半蔵のところへ、お隅は下座敷から茶を入れて来て勧めた。到来物の茶ではあるがと言って、多吉の好きな物を客にも分けに階下から持って来るところなぞ、このかみさんも届いたものだ。
旅の空で、半蔵もこんな情けのある人を知った。彼の境涯としては、とりわけ人の心の奥も知らるるというものであった。お隅は凜とした犯しがたいようなところのある人で、うっかりすると一切女房任せな多吉の方がかえって女房であり、むしろお隅はこの家の亭主である。
「お国から、お便りがございましたか。」
「ええ、皆無事で暮らしてるようです。こちらへも御厄介になったろうッて、吾家のものからよろしくと言って来ました。」
「さぞ、奥さんも御心配なすって――」
「お隅さん、あなたの前ですが、国からの便りと言うといつでも娘が代筆です。あれも手はよく書きますからね。わたしの家内はまた、自分で手紙を書いたことがありませんよ。」
こんな話も旅らしい。お隅の調子がいかにもさっぱりとしているので、半蔵は男とでも対い合ったように、継母から来た手紙のことをそこへ言い出して、彼の酒をとがめてよこしたと言って見せる。