Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Lesen Sie 夜明け前 (よあけまえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.172 Zeichen · 206 Bildschirme
山林事件の当時、彼は木曾山を失おうとする地方人民のために日夜の奔走を続けていて、その方に心を奪われ、ほとんど家をも妻子をも顧みるいとまがなかった。彼は義理堅い継母からも、すすり泣く妻からも、傷ついた娘からも、自分で自分のしたことのつらい復讐を受けねばならなかった。
ある日、彼は奥座敷に娘を見に行った。お粂が顔の腫れも次第に引いて来たころだ。彼はうれしさのあまり、そこに眠っている娘の額や頬に自分の掌を当てたりなぞして、めっきり回復したそのようすを見直した。その時、お粂は例の大きな黒目がちな目を見開きながら、
「お父さん、申しわけがありません。わたしが悪うございました。もう一度――もう一度わたしも生まれかわったつもりになってやりますから、今度のことは堪忍してください。」
「おゝ、お粂もそこへ気がついたか。」
と彼は言って見せた。
十一月にはいって、峠のお頭平兵衛は伊那南殿村への訪問先から引き返して来た。その用向きは、半蔵の意をうけて稲葉家の人々にあい、ありのままにお粂の様子を伝え、縁談解約のことを申し入れるためであった。平兵衛が先方の返事を持ち帰って見ると、稲葉の主人をはじめ先方では非常に残念がり、そういう娘こそ見どころがあると言って、改めてこの縁談をまとめたいと言って来た。