Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Lesen Sie 夜明け前 (よあけまえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.315 Zeichen · 25 Bildschirme
「お民、この手紙はだれが持って来たい。」
「中津川の万屋から届けて来たんですよ。安兵衛さんが京都の方へ商法の用で行った時に、これを預かって来たそうですよ。」
その時お民は、御嶽参籠後の半蔵がそれほど疲れたらしい様子もないのに驚いたというふうで、夫の顔をながめた。「本陣鼻」と言われるほど大きく肉厚な鼻の先へしわを寄せて笑うところから、静かな口もとまで、だんだん父親の吉左衛門に似て来るような夫の容貌をながめて置いて、何やらいそがしげにそのそばを離れて行くのも彼女だ。
「お師匠さま、おくたぶれでしょう。」
と言って、勝重もそこへ半蔵の顔を見に来た。
「わたしはそれほどでもない。君は。」
「平気ですよ。往きを思うと、帰りは実に楽でした。わたしもこれから田楽を焼くお手伝いです。お師匠さまに食べさせたいッて、今囲炉裏ばたでみんなが大騒ぎしているところです。」
「もう山椒の芽が摘めるかねえ。王滝じゃまだ梅だったがねえ。」
勝重もそばを離れて行った。半蔵はお民の持って来た手紙を開いて見た。
もはやしばらく京都の方に滞在して国事に奔走し平田派の宣伝に努めている友人の景蔵は、半蔵から見れば兄のような人だった。