Japanische Klassiker mit Furigana
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よあけまえ
夜明け前
島崎 藤村
Lesen Sie 夜明け前 (よあけまえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.315 Zeichen · 25 Bildschirme
彼がその裏二階に上るころには、おまんも母屋の方から夫を見に来た。
「いや、朝のうちは問屋場も静かさ。栄吉が出勤しているだけで、まだ役人衆はだれも見えなかった。」
吉左衛門はおまんの見ているところで袴の紐を解いて、先代の隠居半六の時代からある古い襖の前を歩き回った。先年の馬籠の大火にもその隠居所は焼け残って、筆者不明の大書をはりつけた襖の文字も吉左衛門には慰みの一つとなっている。
「もうそれでも半蔵も帰って来ていいころだぞ。」と彼は妻に言った。「この節は街道がごたごたして来て、栄吉も心配している。町ではいろいろなことを言う人があるようだね。」
「半蔵のことですか。」とおまんも夫の顔をながめる。
「あれは本陣の日記なぞを欠かさずつけているだろうか。」
「さあ。わたしもそれで気がついたことがありますよ。あれの日記が机の上にありましたから、あけるつもりもなくあけて見ました。あなたがよく本陣の日記をつけたように、半蔵も家を引き受けた当座は、だれが福島から来て泊まったとか、お材木方を湯舟沢へ御案内したとか、そういうことが細かくつけてありましたよ。だんだんあとの方になると、お天気のことしか書いてない日があります。