Japanische Klassiker mit Furigana
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おおとねのおおものつり
大利根の大物釣
石井 研堂
Lesen Sie 大利根の大物釣 (おおとねのおおものつり) von 石井 研堂 (いしいけんどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.600 Zeichen · 17 Bildschirme
既に沈を上げし上は一安心なり、早く挙げ終りて、船頭の苦みを除きたしと、引く時は、敵を怒らしめざるように処女の如く引き、引かるる時は、船まで引き去られん勢に逢い、鰓洗う声の、暗中に発する毎に、胸を刺さるる如き思いを為し、口食ひしめ、眼見張りて、両手は殆んど水に漬け続けなり。
ただ、根競べにて、勝を制せんと思うものから、急らず逼らず、擒縦の術を尽せしが、敵の力や多少弱りけん、四五間近く寄る毎に、翻然延し返したる彼も、今回は、やや静かに寄る如く、鈎※の結び目さえ、既に手元に入りたれば、船頭も心得て、玉網を擬し、暗流を見つめて、浮かば抄わんと相待つ。此方は、成るべく、彼を愕かさじと、徐々と、一尺引き五寸引き、次第に引き寄せしが、船前六尺ばかりにて、がばと水を扇りて躍り、綸の張り卒然失せぬ。逸し去りしなり。
『ちェッ』と舌打ちして、二三秒間、綸を手にせるまま、船前を見つめしが、次で船内にどっと打ち伏して無言なり。今まで、一時間近く、水押に水を漬せる船頭は、玉網片手にすごすご身を起し来りて。
『どうなさりました。』と、漁史の肩に手かけ、少し揺りつつ問えども、答えず。