Japanische Klassiker mit Furigana
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おおとねのおおものつり
大利根の大物釣
石井 研堂
Lesen Sie 大利根の大物釣 (おおとねのおおものつり) von 石井 研堂 (いしいけんどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.600 Zeichen · 17 Bildschirme
実に、彼の人は、夏の土用より、彼岸までに、出遊する日は、僅に指を屈するに過ぎず。彼岸となれば、釣具を深く蔵めて、釣の話しだにせず、世の紛々たる、釣師の、数でこなす派のものを、冷眼に見て、笑えり。其の代り、彼の人の出遊する毎に、必ず満籃の喜び有り、一たび鈎を投ずるを惜むこと金の如く、投ずれば、必ず好結果を期待して誤らず。恰も、台湾生蕃の、銃丸を惜むこと生命の如く、一丸空しく発せず、発せば必ず一人を殪すに似たり。実に、思えば思う程、男らしき釣なり。
その代り、釣具其の他に対する注意も、極めて周到緻密にして、常人に同じからず。たとえば、鈎は自ら新型を工夫して、製作せしめたるを、一本ずつ、其の力を試験したる上ならざれば用いず、それすら、一尾釣り挙げし毎に、新物に改めて再び用いしことなし、綸の如きも、出遊毎に、数寸ずつ切り棄てて、※との結びめを新にし、疲れたる綸※を用いず、言わば、一尾を釣る毎に、釣具を全く新にするなり。鈎をおろすに方りて、大事とること総て此の如くなれば、一旦懸りたる魚は、必ず挙げざる無く、大利根の王と推称せらるるも理りなり。
よし、三つ児のおろせし餌にせよ、魚の呑むには変り無し、ただ之を拳ぐるが六ヶしきにて、釣師の腕の巧拙は、多くここに在り。