Japanische Klassiker mit Furigana
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おおえどおうごんきょう
大江戸黄金狂
野村 胡堂
Lesen Sie 大江戸黄金狂 (おおえどおうごんきょう) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.754 Zeichen · 53 Bildschirme
「心得て居る」
山浦丈太郎は悪びれた色もありません。
「まあ。――尤も、関所の御役人だった旦那が、そんな事を御存じがない筈はありませんわねエ」
「何?」
山浦丈太郎はさすがにギョッとしました。
「それを承知の上で、間道へ踏み込むのは」
「お前は何んだ、――見たことがあるような」
「お忘れになりまして」
又ニッコリ、浅黒い顔、美しくもない髪容ち、木綿物の地味な袷を着て居りますが、ニッコリすると、箱根中がカッと、明るくなるような魅力です。
「白糸のお滝ではないか」
この素晴らしい笑顔で、山浦丈太郎は漸く思い出したのです。滝見の茶屋で、愛嬌を売物にして居た、箱根名物のお滝、小田原の家中の若侍が、どんなにこの女一人を話題にして騒いだことでしょう。
それにしても、以前と少しも変らぬ若さと愛嬌は何んとしたことでしょう。三年前のお滝は十九か二十歳に見えましたが、三年後の今近々と顔を合せても、二十歳よりあまり上とは思われません。
「まア、嬉しいワねエ」
そう言って又ニッコリする様子は、曾てのお滝より、少しばかり物馴れて見えるだけのことです。
「何処へ行くのだ、いきなり藪から顔なんか出して、驚くじゃないか」