Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 159.272 Zeichen · 313 Bildschirme
後ろ影を見送って心配する者もありましたが、それも目には入らないで、お銀様は、ただもうふらふらと歩いているだけのようです。それでもややあって、
「おや?」
とわれに返った時は、月があるのか無いのか知らないが、天地がぼかしたように薄明るく、行く手の山を見ると、それは見覚えのある地蔵、鳳凰、白根の山つづき。
ああ、いつか知ら、甲府の町は離れてしまった。それでも、われを忘れて歩いていた道は、忘れもしない竜王道。
知らず識らず、自分は故郷の方へ近く歩いていたのだと知りました。
このあたりは、もう、人家とては一つもなく、往来もまた人通りがありません。
故郷の有野村。
そんなつもりではなかったのに、どうしてこちらへばかり足が向いたのか。
越鳥は南枝に巣くうということだが、いい知らぬ人情が、本能的に人を故郷の方へ向けてしまうと見える。
ああ、あれは有野村のわが屋敷の中の森ではないか、あの黒いのは。
有野村一帯は父の家のようなものだが、わけてあの黒い森の下に自分のと定められた家がある。
故郷、自分は故郷へ帰るつもりではなかったのだ、故郷を避けて通るつもりであったのに、故郷が自分を引きつける。