Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 159.272 Zeichen · 313 Bildschirme
今の呻吟の声は、裂かれた琵琶の胴から出たのでもなく、殺された琵琶の霊魂が、恨みを帯びて自分の後を追いかけたのでもなく、まさしくこの頭上に吊された人間の死骸――とはいえまい、まだ呻吟の声の出る限りはこの世のものである。
そこでお銀様は、静かに二三歩立ちのいて、その頭上を仰いで見ました。
前いう通り、明るい晩のことですから、瞳を定めてよく見ればその輪郭はほぼわかる。成人にしては小さく、子供にしてはやや大きいのが、素裸にされて、四ツ手に結えられて、松の枝から吊下げられている。その頭が坊主であること――しかし、自ら求めて死に就いた、いわゆる縊れっ児ではなく、人のために強いられて、やむなくこの憂目に逢ったものだということは、一目瞭然でありました。
「かわいそうに……」
そこでお銀様も、それを助ける気になりました。お銀様なればこそ、これを助ける気にもなったので、世の常の女性にして、この時、この際、人を助けんとする余裕や、冷静などがあるものか……だが、その助ける手段方法については、多少の考慮を費さねばなりません。
幸いに、縄の一端が釣瓶仕掛にして、松の樹の幹にからげてあることを知りましたから、お銀様はそれを解いて、やがて徐ろに被害者を地面まで吊下ろしました。