Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 159.272 Zeichen · 313 Bildschirme

Aozora Bunko

そうしておいて、縛めを解いてお銀様は、その被害者の介抱に取掛りました。

お銀様は活法を知りません。急救療治の方法もよくは心得ておりません。介抱してまず耳に口をつけて、

「おーい」

と呼んでみました。

その手答えは極めて遅く、程あって、軽い呻きの声が起るばかりです。

「おーい」

お銀様はなんとかこの被害者の名を呼んでみなければ、呼び醒ます声に力の入らないのを感じ、兄さん――と呼ぼうかと思ったが頭がまるい。坊さんと呼ぶには年が若い。そこで暫く言句に詰まっていたが、急にあわただしく、

「あ、これは――これは弁信さんじゃないかしら?」

発止と思い当ったのは、裂かれたる琵琶です。疑うべくも、疑うべからざる証拠のあるものを、何として今まで気がつかなかったのだろう。

「弁信さあん、しっかりなさいよ」

お銀様は、砕けるほどかたく弁信を抱きしめて、あらん限りの声で叫びましたが、その声は今までと違って、天来の力が籠ってでもいたように――そこで、声と、力とが、神に通じたか、以前よりも、もっと頼もしい息づかいで唸りを立てました。

「弁信さん、しっかりなさい」

お銀様は弁信をしっかりと抱きしめて、四方を見廻しました。